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情けは他人のためならず
 むかしのことです。川田谷、日出谷にはいくつも坂があって、人びとは大変困りました。 ある年の春、一人の年老いた見すぼらしい旅の僧侶が、とぼとぼと坂を上ってきて、ぐったりと道ばたの草の上に腰をおろしました。
 しばらく休んだので、立ち上がろうとしましたが、今までのつかれが急に出て、動くこともできず困っていると、一人の村びとが来て、
「どうかしましたかね」
その声に、
「急につかれが出て難儀をしております。もうゆうぐれですが宿まではまだ遠いし、困っております」
「そうだね、じゃあ今夜はわしの所にとまりなさいよ」
と荷車に乗せて家に帰りました。
「旅の人が難儀をしているので、連れてきたよ、みんなでよく世話してくれよ」
わらじを脱がせ足を洗い、体をふいて布団に寝かせ、おかゆをつくってやりました。
「どうもすみません。こんな汚い姿の私を世話して頂いて、おかげで助かりました。」
何度も礼を言って、その夜はぐっすりと眠りました。
こうして二、三日たつと、少しずつ体の具合も良くなり喜んでいましたが、ある日、主人に向かって
「困っているところを助けて頂き、ほんとうにありがとうございました。私も、もう年ですし、 いつ果てるかも知れません。私が死んだらごやっかいでも汚い荷物は一緒に埋めて下さい。使える物は何でも差し上げますから、ご自由に使って下さい。」
それから間もなく、桜の花が音もなく散っている夕ぐれに、この世を去りました。家の人たちは、悲しみながらも言われた通りに荷物を整理していると、箱の中に小判がいっぱいありました。驚いて村役人に相談すると、
「お前たちが親切にしたお礼だろうから、もらっておきなよ」
と言うので、ねんごろに葬式をしてやりました。
その後、このお金を元にして仕事に精出して働いたので、やがて村一番の長者(金持ち)になったそうです。