加納のあるところの林に一本の大きな木が切り残されていました。地上二メートル位にコブのようなふくらみがいくつかあり、珍しいので切らなかったらしのです。
ある人がこれは珍しい、飾り物にしようかと、のこぎりを持ち、はしごをかけて、
ギーコン ギーコン
と切り始めました。

「ハテ・・・」
と目をこすって良く見ると赤い血のようなものがタラリタラリと落ちてくるではありませんか。あのコブの中に木の精でもこもっていたのかもしれません。
「これはとんだことをしてしまった。どうかおゆるしください」
と手を合わせてしばらく拝んでから見上げると血の流れはとまっていました。
その人は、どうにも気になって夜も眠れない日がつづいたので、コブの木の根元に小さな社を建てて毎朝お参りをしました。
そして、林の木は切ってもこの木だけは残しておいたのでした。この社は、コブ神様として土地の人々は大切にしているとのこと・・・。